【2023夏アニメ】AIの遺電子【最終話(12話)後感想・評価】

【総評】こういう時代になり始めたら、もう一回議論をしよう
点数:68

筆者が観測した本作の概要

本作『AIの遺電子』はチャンピオン連載の漫画で、近代版のブラックジャックと呼ばれるほど大きな期待が寄せられている。らしい。その内容はAIやヒューマノイドを相手に治療をする医者須藤光が主人公になっている。

アンドロイドを武力や労働力にしたテーマ・環境問題に割り切ったテーマは多かったが、ューマノイドの家族や愛や友情をテーマにしているのは他のSF作品にない切り口だったように感じる。「いやそうはならんのでは?」と思う一方で、確かにこっちの切り口の方が面白い作品に成りそうな気もする。

本筋のお母さんの記憶の在りかについては、1話と最終話で描かれていたが、途中に描かれる物語とほぼ無関係なので取ってつけたような印象を受けてしまった事もあり、感想は総評にも書いた通り「良作なんだけど、もう一声!」という感じだった。

HighLight

AIやhヒューマノイドが発達した世界で起こりうる、人類とAIの軋轢を描いた本作品。

この作品最大の長所は作者の想像力の広さだろう。後述するが1話の中で2つほどテーマを用意したことにより、多くの問題提起を視聴者に投げかけていた。いずれも作中で回答を用意していない点も素晴らしい。思慮深い読者・視聴者を対象にした作品に感じる。

特に印象に残ったのは、9話のクリエイターが個人レベルで大きな作品を発信できるという点だ。これは昨今のAI絵師が出た頃から、私が思っていた事に近かったため、少し取り上げさせてほしい。「個人レベルで本来作れなかったものが作れるようになる」というこの問題提起は死ぬほど奥が深いぞ?

例えば、私が書いたクソみたいな脚本と「君の名は」「天気の子」を人工知能に喰わせて、「オリジナルのアニメ映画を作って」と言えば、ポンと新海誠風の作品ができる時代が来るだろう。

さらに踏み込めば、例えば事故で5歳の子供を亡くした両親がAIに子供の動画を喰わせて、「この子が6歳になった姿を作って」とか始めるかもしれない。さらに、それをVRゴーグルで見れるようになるかもしれない。家に帰れば亡くなった子供がいて、その成長する姿を見ることができるかもしれない。それが人工知能が作る幻だったとしても使う人はいるだろう。

この場合、誰がこれを法律で禁止するのか?そもそもこれは禁止する事か?良いこと?悪いこと?無限に議論する余地があるとは思わないだろうか?

あ、どっかの偉い人↑の問題提起を作品にしてくれも良いですからね?

LowLight

ぶっちゃけ構造上厳しいものがある。本作は秋田書店ということでブラックジャックと同じ出版社だったそうだ。その結果、短いストーリーを詰め込むような話が多く、テーマ自体は非常に重量感のある作品なのだが、アニメになるとそうはいかなかった。

なにしろ身近に感じることが難しい”AIが発達した世界”を舞台にしており、その世界で生まれる人とAIのすれ違いを描いた問題提起が15分に1回飛んでくるのだ。視聴者は「なるほど・・・こんな問題もあるのか」「そうか、こういうことになる可能性もあるのか」と受け取る一方で、回答が提示されない本作についてはフワフワした視聴感が続いたことだろう。

頭の良い視聴者なら熱い議論をできるのかもしれない。私はこの分野に疎い上に、斜に構えてみてしまったため「いや、前提として、こういう社会に成りそうになくね?」と思ってしまった。

そして作画がまぁまぁショボいのも作品に悪さをしていた気がする。

まとめ

ぶっちゃけ15分の話で心を動かせというのは厳しいものがある。原作の構造上イジりようがなかったのだろうが、4話とか3話くらいで1テーマにして欲しかったように思う。

本作ではぞれぞれのテーマで起承転結を15分で描く事になり、短い時間で結までいかないといけないのため、うしても物語が”直線的”になってしまった。見ていると「あ、こういうオチになるんだろうな」が大体想像がついてしまった。

それでも、これだけの数の物語を無から生み出す本作の才能は凄まじく、評価する人が居てアニメ化されることも納得だ。真面目な作品は大好物なので今後もこう言った作品がアニメ化されることを期待したい。

自分よりも遥かに面白い作品を生み出した人達を相手にしていることは自覚している上で言うが、「もうちょっと上手にアニメ化できたかなー?」と感じたのが正直な感想だ。ナイストライでした。お疲れ様でした。

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