【2022秋アニメ】忍の一時【最終話感想・評価】

公式サイト:オリジナルアニメーション「忍の一時」公式サイト (ninja-ittoki.com)

【最終話感想・評価】点数:67

はじめに

平凡だった主人公が突如忍者の世界に入り込むオリジナルアニメ『忍の一時』。この”主人公が突如その世界に行く”という構図は主人公が視聴者と同じリアクションをすることが許されるので、構造としては良かったのだが、イマイチ活かされていなかった。公式ページのトップに『全員、忍者————』ってあるけど、ハイテク忍具のせいで忍者らしいやつは一人もいなかったんだよな。主人公のラストのセリフは「忍者なんているわけないじゃないか」だし。視聴者が拾う意味が変わってしまっていやしないだろうか。

忍者の定義が広すぎんだろ。

余談だがこのアニメは有名動画配信サービスで見る事ができない。現代ではこれって結構不利だよなぁFOD独占配信!って言ってるけどわざわざこのアニメのために登録して見る人はあまりいないだろう。とはいえそこそこ楽しませてもらったこのオリジナルアニメ『忍の一時』について書かせてもらおうと思う。

もし面白かったら6話くらいで謝罪の記事を書くと宣言していた1話感想はこちら:

謝罪の記事を書くことは無かった。

最終話概要

最終話直前の11話から確認させて欲しい。

頭首となった一時は伊賀の面々に甲賀と和平を結ぶと提案する。当然猛反発する伊賀の面々。しかし一時の狙いは甲賀に情報を送る裏切り者をあぶりだす事だった。

私の意見に賛同できないなら里を出ていけとまで言い切る。イーロン・マスクばりの強硬的な姿勢だ。(演技だけど)

まんまとあぶりだされた裏切り者は柘植礼羽だった。(サービスエリアで働いていた眼鏡のお姉さん?)裏切り者を排除しないと何もできないと考えていた一時は次の行動に出る。

それは紅雪、時貞と共に里を抜けると宣言して伊賀忍者という立場を捨てて甲賀に突入する事だった。ここまでが11話。雪の中、甲賀に向かう三人の姿はまぁまぁカッコいいものがある。

なかなか予想できない展開が続く。

最終話では甲賀のオフィスを3人が突入する所からから始まる。友人の助けや秘伝忍核が強力なこともあって一時はどんどん先に進んでいく。

異次元のスピードで戦うことが出来るようになっている一時。黒いのはアルゼンチンサポーターでは無く甲賀の機械忍者たち。

甲賀頭首との対話までたどり着く一時。時貞の調べで彼の目的が全ての忍者を潰す事と知っていた一時は「あなたの目的は新たな忍者が生まれないようにする事、あなた(甲賀頭首)自身も忍者になるのが嫌だったんですよね?」といったエルディア人安楽死計画のようなストーリーをぶつける一時。

それに対して甲賀頭首は「母親の死に意味が欲しいのだろう?伊賀が滅ぶことに意味が欲しいのだろう?私は虫けらを踏み潰すだけだ」といった圧倒的悪役な内容で答える。

実は彼なりの良心が、、、と言う展開では無いようだ。

しかし、これまた一時の狙いは甲賀頭首に里を潰していると自白させることであり、この会話は安忍(公安みたいなもの)に聞こえるようになっていたようだ。これを聞いた公安は甲賀のアジトに突撃することが出来るようになった。

無謀な突入に見えたが、目的は自白させること。すごいぞ一時。有能な頭首になっているじゃないか。

一時の目的に気づいた甲賀頭首はアーマード・コアのKARASAWAのような武装を取り出し応戦してくる。秘伝忍核をつかっても互角の戦いで頭首同士の戦いは作画・動き共にハイレベルだった。最後はメタルギアソリッド5のラストのような殴り合いの末に一時が勝利する。

孫とおじいちゃんくらい年齢差があるが忍具があれば問題ない。

一時は不殺を貫くが、隙をついて一時にKARASAWAを放そうとした甲賀頭首を時貞が刺し殺す。そこには公安もいたため、「これは全て私がやったことだ」と時貞が主犯・抜け忍となることで公的には完結する。

一番忍らしい活躍をしていた時貞。このあと描かれることは無く影の存在となったようだ。

ラストは輝麗が女優になっていたり、紅雪がマスクを辞めていたり、一時が忍者でじゃなくサラリーマンになっているところが紹介されて物語が終わる。

HighLight

設定自体は結構面白かったと思う。忍者の学校でスザクと面識がある状態で、今度は里同士の戦場で出会うことになる。学校ではもともと仲が悪かったのであまり戦場でもギャップが無かったのが残念だが、「その設定俺も好きだわ」と言いたくなるものはちらほらあった。

細かい描写も意外とセンスが良かった、頭首となった一時が時貞をおじさん呼ばわりをやめて呼び捨てにするシーンとかは結構かっこよかった。スザクの活躍はもっと面白くできたっぽいんだけど時間が足りなかったようだ。

時貞呼びするところはかっこよかったよね。

ラストシーンの両頭首の対話は制作陣から社会に対する問いかけのようだった。細かいセリフまでは容赦して欲しい。ニュアンスではこんな感じだ。説教臭いけどこのシーンは正直良かった。

甲賀頭首は「お前は恵まれたから幸せな考え方ができるだけだ、自分は出来損ないだからこんな生き方しかできない」これに対して伊賀頭首一時は「自分を被害者だとおもっても解決にならない、目をそらしているだけだ」という内容だ。

生まれや才能に違いがあって、それで人生が左右されることは分かっている。でもそれを言い訳にして投げやりになる生き方は間違っているだろう。そんなメッセージと受け取った。「親ガチャ」とか「社会が悪い」と自分を被害者にする考え方が多い現代で、このメッセージはすごく良かったのだけど、作品の内容とあまり繋がらないんですよね。

今時説教臭い作品は流行らないか。

LowLight

視聴者にキャッチーな内容にしたかったのだろうが、忍者の学校のクダリは要らなかったんじゃないだろうか。公式サイトでは『裏切り者はだれか?』という所にフォーカスしたキャッチフレーズが書かれている。であれば、学園生活での展開はほどほどにして各キャラを触れて回っても良かったかもしれない。

制服姿も良かったけどね、前半後半でやりたいことがブレ過ぎでは?1クールでは長さが足りない内容だ。

1話はそのままとするなら、2話で裏切り者による大きな事件を起こして、少なくとも時貞と主人公は裏切り者がいることを確信している描写、その後に各人物の紹介に行く方が、「これから各キャラを掘り下げられるが、誰が裏切り者か予想してみてね」という視聴者への構図が提供しやすい。これが出来ていれば、視聴者同士の裏切り者予想が白熱していたかもしれないと私は思うがどうだろうか。紅雪が操られていた事のインパクトが強すぎて、最後の眼鏡の裏切り者も誰でしたっけ?という感じだったので盛り上がりに欠ける。

アニメ制作のプロがこの内容を1クールで行けると考えないだろう。元々2クール想定の内容を無理やり1クールでやっちゃったか、話を考えてくれた人に「内容を削りたいと」言い辛い状況だったのか。いずれにしろ上手く回っていなかったのは確かだろう。

まとめ

ついでにいうとこの作品は忍者である必要が全くない。光学迷彩スーツやKARASAWAが出て来たり、紅雪が『忍法:脳にマイクロチップ埋め込み術』で操られたりと、『どこが忍者やねん!』と言いたくなるシーンは多かった。

マイクロチップで操られる紅雪。そのマイクロチップはこのあとスタンガンで除去する荒療治。

後半のシリアス路線は面白かったけど、前半のほのぼの路線も結構面白かったよね。キャラクターデザインというか絵柄が微妙に古い気がするが女の子たちは可愛かった。しかしながら、LowLightで書いた通り、スザクの事やダミーの裏切り者だった輝麗の謝罪の事がついでの様に済まされているので、随所で尺不足を感じる。とはいえオリジナルアニメ。やりたいことを全てやって完結してくれたことは大いに感謝をしたい。やはり誰も結末を知らない状態で見れるアニメが一番続きが気になる。

wikiみたら結末がわかってしまう原作有アニメでは、心の奥底に「調べれば1分で結末分かるんだよなぁ」と冷静な自分がいるため、「結末が気になる」という姿勢で100%楽しめるかと言うと疑問だ。それ以外の描写や細かさで楽しんでいる。

「結末が読めない・完結してくれる」オリジナルアニメ万歳、失敗作も多いけどオリジナルアニメ最高。

1クールで完成度あげるのって難しいですよね、お疲れさまでした。
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