【番外】暮れる陽を止めろ

3大欲求には足りないものがある。

 

 

それが「承認欲」だ。

 

 

 

逃れられぬ街で僕らせめて夢を見たい

私は立派な大学生ではありませんでした。ユキビタス社会を目指してネットワークの専門家を養成する研究室に所属していながら、とうとう「プロトコル」が名詞なのか動詞なのかすら理解する事なく書きなぐった卒業論文、「なんやかんやするネットワーク設計のほにゃらら」は、私の人生の汚物入れの中で真っ赤に泣きじゃくるばかりです。

 

 

 

 

立派な父が支払った私立理系大学の学費を踏み潰して、「家に帰ってたえちん(※1)と遊ぶ」とtweetして洗足池から乗った東急池上線を五反田で降り、そのまま向かいのホームの3両電車に乗り込み長原から歩いて帰る。そんな大学のサボり方をしている私こそが、本物のストライクフリーダムガンダムでした。

↑※1たえちん

 

 

 

就職活動の最中、全力を尽くして取り組んでいたのは断じて就職活動などではなく、パズル&ドラゴンというスマホゲームでありました。某有名電気メーカのお偉いさんが話す”ありがたいお話”を聞き、恐らくエリート人生を歩んできただろう人事が「何か質問はありますか?」と聞いてくれている説明会会場で、私はパズドラの運営であるGunghoに「実装されたアルテミスの回復が”0″なのはバグじゃないんですか?」と質問するのでありました。

 

 

 

 

こんな行動を取り続けていた私は、社会に対する反抗期を迎えた大学二年生がかかる病気の奴隷になっていたかというと、決してそんなことは無く、人生を真面目に生きる事は素晴らしいと唄った女性シンガーの名曲を聞きながら「Yeah hello My friend なんてさ 言えたならいいのに」と強烈にシンパシーを感じるのでした。

↑ 3:23~

 

 

 

ゆらゆらと揺れる影が君を妬む

「就活生に大して偉そうな言葉を放って必要以上のリスペクトを享受してぇ」

 

 

 

こんな邪な思いを抱えて業務に勤しむ私の元に、当時所属していた会社の人事からこんな連絡が届きました。

 

 

 
「就活生の志望度をより固めるために、活躍する若手社員として相談に乗ってあげて欲しい。」

 

 

 

 

このメールを見た瞬間に「That’s just what I wanted to hear.」とTOEIC345点の私の脳みそが流暢な英語を呟き、「学生相手に威張り散らかして”参りました”と帰らせればいいんだな」と、人事の思惑と540°逆の理解をするのでした。

 

 

 

 

就活・転職シーンの相談相手は常に”「今この瞬間何をすればいいか」具体的なアクションを欲している”という事を理解していた天才メンタリストの私は、持ち前の金箔のようにぺらっぺらな言葉で就活生の心を魅了し、学生の好感度ナンバー1と言う賞を受賞する事となりました。

 

 

 

 

業務を上司に任せて参加した就活イベントを終え、自宅に直帰しようとする私がOutlookを覗くと、トラブル対応に追われる上司のやり取りが目に飛び込んで来るのです。

 

 

 

 

学生に対して「今この瞬間何をすればいいか」を眩しい輝きと共に説法のように垂れていた私は、人間が持つ”発言と行動を一致させようとする心理バイアス”を33-4でボコボコにしたのち、トラブル対応に追われる上司を手伝う事なく、やはり直帰するのでした。

 

 

 

 

転職後、そんな”学生向けの対応”を任される事が無くなった私の中に潜む、学生好感度ナンバーワン全身金箔男は、目覚まし無しで復活を果たすと、自らの欲求を満たすために持ち前の行動力を発揮し始めます。

 

 

 

 

得意を売るならココナラ!的なサイトでは、数百円という破格の安さで就活アドバイスをする野生のリクルーター達がいる事を知り、数百円分の責任も取りたくないと感じた責任の無さの塊である私は、『匿名・無料』というまさに責任の空集合のようなサービス「LINEオープンチャット」に目を付けるのでした。

 

 

 

 

一日5時間程度、2chまとめをチェックするような生活を20代前半で徹底していた私は、精神年齢が中高生で止まってしまった”子供社会人候補”の考えている事をある程度把握しており、ビジネス系書籍を多く抑えているという、私個人の脇差しと組み合わせる事で、勝機があると確信するのでした。

 

 

 

 

結果、2000人を超えるグループで少し発言を繰り返した後に、「就活について私と相談するチャットを個別で作ります」と発言すれば、100人近くの学生が集まってくれたのは、僥倖と言う他ありません。

 

 

 

 

集まってくれた学生に対しては全力で支援をすると決めたいた私は、以下の自分ルールを作成しそれを学生達に無償で提供し続けるのでした。

・細かなテクニックではなく、本質的な考え方をアドバイスする
・具体的な企業名を出すことなく、最終的な決断を相談者に促す道案内に徹する
・不安そうな学生はとにかく前向きに成れそうな言葉を選ぶ
・相談や発言に対して、全レスする
・一日1つ1500文字程度のメモを作成し、それを毎朝オープンチャットに提供する

↑ピングーシリーズがそれである。読む必要は全く持ってありません。

 

 

 

こんなオープンチャットに参加する学生のほとんどは圧倒的な優秀層であり、真面目で情報感度が高く、行動力のある彼らは、当然のように次々と内定を獲得するのでした。

 

 

 

彼らに私のアドバイスが必要だったかは全くの疑問ではあるのですが、投げられる感謝の言葉を見て私の承認欲求は満たされ、全身を金箔で包まれた承認欲求の化け物は静かに眠りにつくことが出来ました。私は彼を厳重なロックが付いた棺桶に押し込みます。次に彼が目を覚ました時に、私が取る奇行に注目することなく、静観に徹していただければ私の矛先が貴方に向くことは無いのでしょう。(脅迫)

 

 

 

 

副産物として思わぬ発見がありました。せっかくなので、その2つをここで皆様にお伝えしたい。

 

 

 

1つ目:”毎日”の情報発信は気が狂う
私が10年間で積み重ねてきた学びや哲学は30日分も保有しておらず、言葉にしてみればほとんど漫画や本の言葉を書き写しただけの模造品となり果てました。

 

 

そのほとんどが”進撃の巨人”と”はねバド”に起因しており、読んだことある人が私の発信を見れば、「こいつ影響受け過ぎだろ」とドン引きされる仕上がりとなっている事でしょう。

 

 

 

そんな”自分の中に有る物”を中心に情報発信していれば、一瞬で在庫が無くなる。SNSや配信により、実力が無い人でも簡単・気軽に情報発信するようになった現代で、発信者が突如現れ消えていくのは、こういった「在庫切れに」なってしまった発信者たちなのであろうと思います。生き残るのはゲーム実況や雑談配信など、突き詰めると同じ内容を繰り返す発信者だけとなっているのは想像に難くありません。

 

 

 

発信の頻度を上げればクォリティが下がる。クオリティを突き詰めれば、頻度が下がる。この当たり前の理屈すら、頭だけではなく心の底から理解できるのは、毎日情報発信をするという自分ルールを実行したことがある人間だけだと確信しております。

 

 

 

2つ目:この職種に自分は意外と向いている
ある程度勝機を感じて始めた営みだったが、思っていたよりも反響が良かった事は幸運でした。1週間そこらで100人以上のフォロワーを獲得し、彼らと真剣にやり取りを出来ていると言う点、なんかお礼を貰ったという点だけに絞れば、恐らく私と同じことが出来る人はそんなに多くないと思います。

 

 

 

 

「向いている」と感じる主な要因は、やっていて「面白かった」と感じた事でしょう。玉石混じるオープンチャットの中で、エリートの相談だけでなく、就活弱者の相談にも乗れたのは、本記事前半で記載したようにストライクフリーダムガンダムとして生きた時間があったからだと感じています。

 

 

 

 

すべて忘れて踊れと怒鳴る祭囃子

人生で学んだ事・大切だと思った事を発信し、それに対して感謝を貰えるという事は、自分の人生そのものを肯定されているかのような錯覚があり、大学をサボって暁の護衛に勤しんだ時間も、バイト代を1番くじに費やした愚行も肯定されているかのような勘違いにつながっています。

 

 

 

 

  

人生で無駄なものを捨てよう!と発信する人を見れば、「いやいや、ケータイゲームやオンラインゲームで培われる社会性も確実に存在していて、価値があるんだよ。【ウマ娘で学んだ大切な事】が、【スポーツで学んだ大切な事】に負ける道理は無い。」とゲーマーの気持ちを支える立場になり

 

 

 

 

人生は楽しむことが大事!好きなことを全力でやろう!と発信する人を見れば、「イヤイヤ、自分の生活も社会の上で成り立っているんだよ。それを忘れてゲームや漫画でくだらない時間を過ごすなんて、人間としてのステージが低くないかい?まぁ、別に好きにすればいいけど」と立派な社会人面をしてしまうのであります。

 

 

 

 

 

なんという醜さ。自分の人生や考えを肯定したいがために、人の考えを否定して回るなんて。そんな在り方はあらゆるビジネス書にも書かれておらず、そんな考え方をする人間を、大好きなウマ娘である彼女達が好きになってくれる事はないでしょうに。

 

 

 

 

 

人生の教典とも言える自己啓発書を燃やし、人生の伴侶とも言えるウマ娘たちに蔑まれながら、学生たちに立派なアドバイスを垂れる。こんな人間を目指していたのでしょうか?

 

 

 

 

あぁ、嘆かわしい、嘆かわしい。立派な社会人生活を送り、不特定多数の人から感謝の言葉を貰いながらも、自分の在り方・考え方が正しいかを悩み、苦悩する自分。

 

 

 

 

 

この深い悩みにたどり着いてしまうほど、客観的に自分を見る事が出来る力を持っている、、、、それほどまでに俺は凄いっ!!!(逆転の発想)

 

 

 

 

 

最も醜い情報発信は、自分の不幸を謳う情報発信でしょう。「私は忙しい」、「私は悩んでいる」、「私はもう諦めた」、「私は恵まれていない」。承認欲求が満たされず「居場所が無い」と騒ぐ居場所に抜け抜けと属して、舐め合う傷跡はさぞかし蜜のように甘い事でしょう。

 

 

 

 

 

自分が行った実績だけならまだしも、自分の中の苦悩や葛藤さえも承認欲求を満たすための素材とするその姿。現代社会を生きる人間の三大欲求は、ついに4つ目を迎え入れていると言っても過言ではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほど、全身がぺらっぺらの金箔に包まれた男を棺桶に押し込んだ私のもまた、承認欲求という金箔に包まれており、それを剥がしてみると、また金箔に包まれているという事だったわけです。

 

 

 

 

 

それらをまた、剥がして、剥がして・・・・繰り返した結果、中から出てきた物こそが、“METAL BUILD ストライクフリーダムガンダム”なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オチが弱~~い♡

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり。

タイトルとURLをコピーしました