【2022春アニメ】盾の勇者の成り上がり 2nd Season【BackPort】

公式サイト:TVアニメ『盾の勇者の成り上がり』シーズン2 (shieldhero-anime.jp)

【感想・評価】 点数:59

はじめに

放送前から人気があった中、2019年に1期が放送され、多くのファンとキャッチーな内容から世間の人気を獲得した『盾の勇者』の2期が放送となった。正直、普通のファンタジー作品に成り下がってしまったような印象を受けた。あまりこの作品のファンではない私でも「あれ?なんか元気なくなった?」という感想だ。誰もが感じてしまっているだろう”1期で成りあがってしまったから、2期でやることがない”という問題が如実に出ていた。

今回の記事は2期のアニメ映像を対象とした記事と言い切っておく。原作やコミカライズ・スピンオフは加味せず、2期アニメに限定した感想だと了承いただきたい。なんでも「盾の勇者2期」は原作改変が激しかった悲しみを背負っているらしい。原作の良さが出ていない or 原作を改変される悲しみは我々もよく知っている所だからだ。 

私はすっかり原作を追わない人生になってしまった。あの悲しみは無くなったが、原作を追っていて良かった体験も失った気がする。

主題として記事だが、1期の事にも触れておこう。本作『盾の勇者』は攻撃手段を持たない勇者として転生した主人公が、不遇な境遇から仲間を獲得し成果を残すことで、主人公を見下していた面々をギャフンと言わせる、いわゆる「スカッとジャパン」系の作品だ。作品の構成自体は否定はしないし、「あいつらを見返してやる」という視聴者と一体となれるような”目的”が強みの作品だった。それだけに主題を失った代償は大きい。

武器を持てるだけマシだ、と主人公に煽られる女の子。可哀そうに。

物語の概要

まずは2期の概要を追っていこう。主人公は1期の活躍もあってラフタリアの故郷の領主になって信頼を得ていた。そんな時に波のカウントダウンが止まっていることに気づく主人公。王国に呼び戻されると数百年に1度復活するという霊亀がその名を冠する霊亀国で復活したらしい。

波のカウントダウンってみることが出来たんだ。

ほかの勇者はスコープ外と言うことで立ち去ってしまうが、主人公だけは霊亀の対処をすることにした。

スコープに厳しいエンジニアの鏡。SOWの勇者だ。

霊亀国の王室ホウライ、実は霊亀の使い魔だそうだ。霊亀の目的は人の魂を使って波の発生を防ぐらしい。だからカウントダウンが止まっていたのか。何者かに霊亀を復活させられ、霊亀が暴走しているらしい。このホウライと主人公は行動を共にすることとなる。

オスト=ホウライというキャラクター。中華風ファンタジーで進めるようだ。

割と早いが五、六話の段階で霊亀を起こした悪役が現れる。そこでホウライこそが霊亀のコア、霊亀そのものだと男から告げられる。

今回スカッとする題材がこちら。演じるのは木村良平

ちょっと展開が早いが、戦いはホウライが自ら命を絶つ形で木村良平との1戦目は終わりを迎える。霊亀は消えることで問題を解決するが、黒幕の男キョウを取り逃す。男が逃げた世界に追う形となる。

6話にして退場となる花澤香菜演じるホウライ。
勇者は他世界に侵攻することは不可能らしい。
不可能ですって言った直後に許可を出すシステム。総務部の鏡だ。

目を覚ますと知らない牢獄におり、なんとレベルが1になっていてラフタリアは体が小さくなっていた。そこで狩猟具の勇者と出会う。彼女も転生者らしく「もしかして日本人?」とメタ的な会話が広げられる。

同じ世界の出身者に勇者をしている姿を見られる主人公。私だったら恥ずかしくて耐えられない。

その後またしても木村良平に仲間も分断されるが翌週には合流したりする。

アニメのスピード感のせいかもしれないが、「このくだりなんだったの?」という展開が結構多い。

決戦の直前には主人公とキョウの現実世界での姿が対比のように描かれ、最後は木村良平を成敗して一連の騒動が完結する。

いい事言ってるっぽいけど15分でとってつけた感じがあり、全く視聴者に響かない。
意味深な捨て台詞で消え去る本の勇者。もうでてこないよね?
敵っぽい立ち位置の女の子も味方に。可愛い女の子は絶対に味方になるのが”なろう系”って感じだ。

HighLight

1期の頃はかなり力が入っていたため多少見劣りするレベルにはなっているが、作画のクォリティや万人受けしやすいキャラのデザインは健在と言ってよい。信頼できる仲間と明確な敵だけでなく、敵でも仲間でもない人物立ちとの繊細な距離感も本作の個性となっている。「敵」「味方」がはっきりしがちな転生系作品の中では珍しい気がするがどうだろうか。

キャラクターは可愛いとは、、、思うのだが。


昨今の人気が出る作家は独自の世界観の作りこみが深く、この作者もその一人だと感じている。あちこちに異世界がありそこにそれぞれ勇者が存在し、しかも世界を行き来してしまう始末だ。世界が複数存在しそれぞれのドラマと役割があることを表現する世界観は、並の作家が出来ることではない。果たしてこの作者がその設定を生かし切っていたのかは置いておき、チャレンジングな題材となっている事は取り上げておきたい。挑戦した分だけ作品の個性となっているという話だ。

とにかく登場人物が多い。誰が何だかライト層は把握できていないはずだ。

LowLight

私はその限りでは無いが、万人受けする作品のデザインをおさらいしておこう。人気の出る作品は、題材のプライオリティが明確になっていることが多い。「悪役を倒す」とか「仲間が大切」とか目に見てわかる題目がわかりやすいのだ。iPhoneのカメラでシネマモードを使うのと同じことで、背景をぼかして被写体を鮮明にすることで、写真が「何を映しているか」というプライオリティをつけることで、写真の解像度が良くなる。今回の盾の勇者2期では、1クールの中でプライオリティが付いていないために、物語の解像度の低い中途半端な仕上がりになってしまったように思う。

この霊亀編では何を題材にしていたのかわからない。一度仲間になったホウライと死別する話、本の勇者の話と主人公が12話で語っていた「俺は俺のために戦う!」という題材。どこがメインだったんだ?

ホウライをメインにする割には6話で退場している事、登場が2話以降であることから掘り下げが余りにも浅い。アニメオンリーで楽しんでいる視聴者に、さっき出て来たキャラクターが犠牲になる事で「はい感動してください!」っていうのも無理な話だ。

なんなら最終話で回想シーンとして掘り下げが5分ほどある。順序頭悪くないか?

本の勇者と盾の勇者の対比についてはもっと意味不明だ。主人公は12話の戦闘の中で「正義に味方でもなく、誰かのためでなく、自分のために戦う」という趣旨の発言をする。しかし、それまでに主人公が、自身の勇者としての役割に疑問を持つシーンは無く、苦悩する日々の描写もアニメの中には無い。そこから最終決戦で戦う理由を話されても「はぁそうですか」としかならない。

ついでに作画の劣化も足を引っ張っている。せっかくの本の勇者の残酷な描写であるシーンの作画が安っぽいため、B級作画アニメ特有の乾いた笑いが生まれる。

安っぽすぎる11話の”グシャァ”のシーン。必見だ。

まとめ

本作は一定の人気があり、3期も決定しているようだ。スピンオフの方がボリュームがあるくらいに人気があるらしいが、2期は微妙だっただけに今後はどうなるだろうか。私の趣味ではないが、世間ではそこそこ人気がある”事実”は受け止めれるようにしたい。

チェーンソーマンといい、熱量の高いファンが多い作品のアニメ化は常に火種を孕んでいる。そんなことを思う今日この頃。
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