2020年には何があっただろうか。言うまでも無く2月にダイヤモンドプリンセス号が日本を騒がせ、そのまま世界を一変させた。その後、外出自粛により甲子園などあらゆる興業が中止となり、オリンピックも延期する事となった。8月には安倍首相が辞任を表明し、11月にはアメリカ合衆国大統領がバイデンに決まった。
あなたは2020年何をしていたでしょう。私は闇のプロジェクトが終わったところで、その年の自分のツイートを見るとウマ娘のツイートしかなかった。その時ハマっている事しか呟かないアカウントって普通に微妙ですね、反省反省。
本記事では2020年の各クールから1作品を独断と偏見でピックアップし紹介させていただく。一番良かったではなく「ちょっと紹介したいアニメを」だ。
前回は年間最優秀賞を用意していたが、2020年は不在だ。2020年断面では「消去法だけどこれかなー?」とSNモッピーと話していたが、そいつが2期でちょっとやらかしたこともあり、取り下げさせてて頂いている。
まぁ、そんなことは忘れて2020年を振り返ってみよう。
2020年冬アニメ
このクールはコロナの影響を受ける前に製作と放送が終わった作品が多いので、2020年の中ではアニメの本数が多いようだ。タイトルを出して遡るのがいつもの書き方なのだが、こんなメモがあったので共有するよ。
S 理系恋 レールガン ???
A ランウェイ 22/7 武道館 異種族
B コスモ マギレコ SBR pet マギレコ
———–以下もう来ないでほしい—————
C 防振り うち玉 ネコパラ 虚構 ダーウィン
D 花子 石ガイジ プランダラ シートン Grandorder
E PSO2 異世界カルテ はてな
F 暗黒破壊神 ドロヘドロ
G デンドログラム
石ガイジで伝わることは無さそうだが、「宝石商リチャードのほにゃららのことだ」。
崩壊した22/7は京アニデザインという良さもあったけど、曲が秋元すぎて受け付けなかった。レールガンは食蜂操祈ことエクステリアのクール。レールガンはいつも面白いけどこのレールガンTが一番良かったかなぁ。ある意味レジェンドになった異種族レビュアーズは置いておくが、このクールで触れられずに居られないのはこの作品。
『ID:INVADED(イド:インヴェイデッド)』
この作品は「Fate/Zero」や「アルドノア・ゼロ」をおくりだした監督あおきえいの作品だ。主人公の鳴瓢秋人(なりひさごあきひと)は元警察官で殺人犯だ。大量殺人・猟奇殺人が横行する現代社会が舞台となっており、「蔵」と呼ばれる組織で殺人犯の特定を手伝っている。
とても難解な設定なので頑張って説明する。殺人現場には殺意の残滓のようなものが残っており、それを携帯端末の「ワクムスビ」に回収し、「ミヅハノメ」という装置と組み合わせることで、犯人の精神世界に入ることが出来る。精神世界では謎を解くことで犯人のヒントを見つけられる、ついでになぜか「カエル」と呼ばれる少女が死体で毎回転がっている。作中ではこの精神世界を”イド”と呼んでいる。
多くの犯人のイドのなかでシルクハットにステッキをもった「ジョンウォーカー」の姿が確認でき、彼こそが多くの人間を大量殺人鬼、猟奇殺人鬼にしていると、組織は確信する。この物語はこの「ジョンウォーカー」を捕らえるまでの物語だ。
まず1話が鳴瓢こと酒井戸がイドの中でバラバラになっているシーンから始まる。この時点で「あ、多分面白くないわこれ」と感じたのを今でも覚えている。だが面白いので安心して欲しい。特にこの作品は、空気作りとEDへの入りがカッコいいのだ。曲は結構意味わからないけどOP/ED共に独特の魅力がある。
本作の魅力は圧倒的なダークファンター感に限る。本作では2人の主人公が存在し、これが魅力的なのだ。
1人目は本堂町小春だ。研修終わったばかりの分析官で正義感の強い女性だ。だが異常な存在だ。2話で”穴あき”に捕らわれ、決死の覚悟でドリルに頭を突っ込ませることでイドを発生させ逮捕に繋げる。それ以降「欠けているものが整って見える」という障害を持つ。本堂町に関しては、4話~6話で捕らわれた少女と”墓堀り”とその結末あたりがかなり面白い、というか救いが無い。この作品全体を通して救いが無い。
当然2人目は鳴瓢秋人だ。6話の結末から、物語は「対マン」につながっていく。彼は連続殺人鬼「対マン」に娘を殺されており、妻がその後を追う形で自殺している。自身も「対マン」を敵討ちした事による殺人犯となっており、その後はイドを使って5人を自殺に追いこんでいる。
特筆すべきは10話のイドの中のイドでの出来ごと。妻と娘が殺される前に時代が舞台となったイドで過ごすことで、妻と娘が死んだ世界こそが夢だと思うこととなる。丸2年イドで過ごした所に本堂町が現れ、現実を取り戻す。ここから元の世界に戻ることになるが、救いが無い。記事のために久しぶりに見たが、凹んだ。このアニメの10話より辛い話あるんだろうか。
ここまで書いておいて何だが結末は自分の目で見て欲しい。物語は現実の推理と、イドという仮想世界の推理が並行することで退屈しない作りとなっている。1クールで送られる作品でこれほど重い空気で過ごす事も珍しい。余りにも多くのメッセージを残した本作は知る人ぞ知る良作品だ。もちろんAmazonprime videoで見れるので時間さえ許せば目を通して欲しい。
2020年春アニメ
コロナショックもあったが一応水面下で作品の製作は行われていたようで夏に比べるとまだまだ作品数が多い。「富豪刑事」が深キョン不在でめちゃくちゃ微妙だったり、PAが送る謎アニメ「天晴爛漫」なんてのもあった。PAたまにこういう事するよな。「SAO」のアリシゼーションや「かぐや様」2期、「プリコネ」の1期や「邪神ちゃん」2期など一定の資金力と安定感のある作品が多かったこのクールだが、結構な数が延期となったはずだ。そんな中、新顔ながらしっかりと結果を残したこちらの作品を紹介したい。
『アルテ』
16世紀初頭のフィレンツェで絵を学びたいお嬢様は、街に出て工房に入る事を望む。そこで知り合った変人画家に弟子入りする事となる。貴族家を存続させるために「男に気に入られて結婚する」というレールから外れた生活を望むが、それは家に反発するという事ではなく、純粋に絵が好きだから画家になりたいというかなり爽やかな物語の始まりだ。
2021年でブルーピリオドを取り上げているから、コイツこういう作品好きだなと言われそうだが、そんなことは無い、偶然だ。というかこのクールは新作がふがいなさ過ぎて他に触れらr、というのは無しで行こう。決して仕方なく選んでいるわけではなく、このアルテは他のクールでも遜色のない良さを秘めている。
この作品は女性であることが逆境である世界で前向きに頑張る姿が魅力的だ。住み込みで知らない世界で活躍し、徐々に信頼を勝ち取っていく姿は超名作「千と千尋の神隠し」の温泉宿で仕事を覚える千の姿によく似ている。
途中で家庭教師としてヴェネツィアに行くことになる。この教え子のカタリーナが親の前では大人しい少女なのだが、親がいない所ではクソガキだ。アルテは16人目の家庭教師になるらしい。元貴族なのに自分がやりたいことをやっているアルテの姿に影響され、最終的にはカタリーナにとってアルテは良き理解者となる。
アルテにとってカタリーナは過去の自分で、カタリーナにとってはアルテが未来の自分に見えたのだろう。カタリーナは本当は料理の勉強したいそうだ。そんな幾つかのヒューマンドラマを超えた最終回でアルテは集大成ともいえる絵を書いて物語は終結する。
前述したIDのような激重作品も良いが、このくらい気楽に見れる作品も勿論良さがあり。女性だけど出来ることはあるという作者のメッセージがしっかり乗った作品に感じた。アルテの行動や考えがよく描かれていて、これこそ理想的なアニメ化作品なのでは無いだろうか。原作ファンの声はちょっと分からないけれど。
2020年夏アニメ
2020年夏アニメ
そしてコロナショックによる大氷河期の到来だ。絵柄はちょっといいラピスリライツ、もう思い出すことは無いであろうPRETENDERというアニメもあった。ここでエクゼロスを取り上げるとさっきのアルテのせいもあって、金髪巨乳が好きなだけじゃないかと言われそうなので辞めておく。結局多くの春アニメが延期で夏の放送となった中で取り上げるのはこの作品。
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 完』
5年越しの葛西臨海公園から物語は始まる。物語はプロムの企画とその成功までの道筋、裏で動いている話が本命だ。全く知らない人のために1行で説明すると、学校行事とか人の手伝いをする不思議な部活で活動する男一人、女二人と周囲の人たちの群像劇だ。
学校行事としてプロムのプロモーションを進めたことが保護者会にハレーションを起こしていた、そんな問題を雪ノ下自身で解決する必要があると姉は指摘する。大切な友人を手伝うのは当然と由比ヶ浜は主張するが、雪ノ下自身が「自分で成し遂げたい」と突き放す。そんな3人の関係を姉は「共依存」と表現していた。
その次の5話では名シーンメーカーの平塚先生が本件の事を雪ノ下にとっての試練、通過儀礼と表現する。「今後、雪ノ下とどう関わるつもりだ?」という問いかけに「関わらない選択肢はない」と言ってのける八幡。
その後は先生のアドバイスも受けて、雪ノ下に対立する形で関わることにする。材木座、川崎、戸塚を呼び出し、雪ノ下にぶつける捨て案を作成することを依頼する。気のいいメンバーは手伝ったり応援してくれる。最終的には雪ノ下案のプロムが大成功で終わり、勝負は雪ノ下の勝ちとなる。勝負に勝った雪ノ下の願いは「由比ヶ浜の願いを叶えて欲しい」であり、由比ヶ浜の願いは「八幡の願いを叶えて欲しい」だった。
記事のために見返しているのに後半は内容に集中しすぎて何のメモも取っていなかった。長かったラブコメも11話で八幡の望みを雪ノ下に伝えることで決着する、由比ヶ浜が公園から帰った後に本作で初めて恋と言うワードが現れたのが印象深い。
本作は隣人が贔屓にしている作品で、ウチの贔屓と同期いう事もあり2013年から相当身を入れて作品の結末を追ってきた。そのため本作の特色で魅力である会話劇が、めちゃくちゃ刺さる。斜に構えて見れば学校行事と言う小さな問題だが、問題の掘り下げが上手なことから3期にわたる大問題に発展している。微妙な人間関係のほつれを主題としながら3期までこぎつけたのは作品の地力に他ならない。
この作品で是非心に止めておきたいことは「未完成な人間には依存性がある」ということ。教えているつもりが、支えているつもりが、その役割を得られる事に気持ちよくなって、今度は自分が依存していってしまうのだ。指導してその人が良くなったら、今度はまた他の箇所を直そうとし始めてしまう。結果的に、理想的な人間関係から遠い場所に着地してしまう。そんな人間関係の難しさを描いた本作。貴方にはどんなメッセージに感じたのだろうか、是非まとまった時間で見て欲しい、見直して欲しい作品だ。
めんどくさいと思うくらいに人間関係に真面目に向き合った、ピュアな人にしか刺さらなさそうなこの作品。完全に個人主義となってしまった現代の潮流と完全にミスマッチしている。この作品が行けるか行けないかでかなり大きな分かれ目がある気がする、勿論どっちだとしても我々はアニメの話で盛り上がれる。敵か味方かという話ではなく、守備範囲の話をしているだけだ。
人間関係や社会に疲れた人の「現実逃避の場所」と確立された深夜アニメ業界で、もうこういう作品は出てこないんじゃないかなーと思う。視聴者の年齢層が上がった現代でゴリゴリの青春物を作ることも無いだろうし、もしそんな作品が現れたとしても、年を取った我々が自分の事のように見ることも出来ないだろう。エンターテインメントは若い内しか見れない作品があるという事を教えてくれた。どう考えても遅ぇよ、もう30超えちったぞ。でもサンキューはまち、フォーエバー俺ガイル。
2020年秋アニメ
コロナショック後の業界も形を取り戻しはじめ、本来のアニメ本数に戻ってきたのがこのクールだ。「アサルトリリィ」と「安達としまむら」が木曜日を百合の花で彩り、土曜日には「ごちうさ」3期、「ラブライブ虹ヶ咲」、「神様になった日」と強力な3本がならんだかと思えば、最後の一人は転げ落ちていった。Twitterで激推ししてホントすいませんでした。そういえば謎の掘り出し物枠で輝かしい結果を残した「無能なナナ」もこのクール出身だ。
このクールで新顔ながら満場一致でオススメするのが、そう!あいつです。
『魔女の旅々』
最年少の14歳にて魔術試験に合格した秀才イレイナは街の魔女には疎まれ、弟子に取ってもらえない。そこで街の外の「星屑の魔女」に弟子入りする事を頼む。
両親の計らいもあってボコボコにされるイレイナ。なんやかんやあって15歳というこれまた最年少で最高位「魔女」になる。安直ネーミングセンスの先生によって、髪が灰色だから「灰の魔女イレイナ」が誕生した。ちなみに先生が星屑の魔女なのは「カッコいいから」らしい、元をたどればおかんのせいなのだが。魔女になったイレイナは両親に冒険の許可を貰う。「危なくなったら逃げる事」「自分が特別な人間だと思わない事」「いつか帰ってきて元気な顔を見せる事」を約束に灰の魔女の旅が始まる。ここまでで1話。
ちなみにその後は色んな国をまわり、3年の月日が経つ。2話からは18歳になったイレイナが色々な場所で経験した話が、各話完結で描かれる。魔法使いの国ではサヤという少女に指導をつけて、スペアの帽子までプレゼントする。のちにこのサヤも魔女になったと聞く事になる。
こんなハートフルな話の後に、なんとも後味の悪い結末を迎える物語が続いたり、この作者かなり手札が多い。特に3話のBパートはダークなオーラが強い。虐げられていた身分の少女のために幸せな感情を集めた瓶を少年が届けるという話だ。結末は描かれないが「自分が手に入れられない幸せを知る事ほど絶望するものはない」や「善意が良い結果を作るとは限らない」という説教臭い話を思い出したとイレイナが独り言をいって終わる。何かをオマージュしているのだろうが、根本的に話を作るのが上手な作者だ。
印象深いのは10話の少女を救う物語だ。依頼の内容よりも先に報酬を確認するイレイナが良い、結構好きな笑いをしてくれる。しかしながら本編はゴリゴリのダークファンタジーだ。ちょっとネタバレになってしまうから内容を書けないのが心苦しいが、視聴済みの貴方は画像を見れば大体思い出せるはずだ。
6話冒頭の「ようこそ糞みたいな国へ!」のシーンを見て笑ってしまった。このシーンめっちゃいいな。童話のようなちょっと説教臭いメッセージを含みながらも完成度の高い話が続く。とにもかくにもイレイナが魅力的すぎるのが本作の魅力だ。
可愛いだけではなく微妙に性格が悪いために面白い掛け合いを見ることが出来る。根っこはかなり真面目ないい子なので見ていて気持ちがいい。ありがちな内容と主人公にも関わらず、この作品と対等なクォリティの冒険譚が全く出てこない。時間が経つたびにこの作品の偉大さを感じる。それに手ごたえの無い回がほぼない、全話面白かったと言っても過言ではない。2期製作が待ち遠しい数少ない作品だ。
2020年まとめ
夜間研修の前で時間があったことから今週相当この記事に時間を使ってしまった。前回のPlayBack2021に比べるとボリュームが違い過ぎる気がする。
1年以上前の作品はちょっと記憶から消えている所があるので、今回全て見直すという偉業を行った。おかげで取りたい映像と書きたい内容が書けたので満足している所存だ。
今回紹介した作品の中で、1クールで見れるIDと魔女の旅々を見ていないのはちょっと論外ベイベーだ。Amazonprime videoで見れるので冬が訪れる前に目を通して欲しい。
既に見たことがあるあなたも振り返って見て欲しい。新作を追う事に徹していた私は過去作を見直すということをほとんどしない。が、今回久しぶりに見直すことができて良い機会になった。やべぇな深夜アニメおもろいぞ。無数の屍から目を背けながらそんなことを思った。
おわり。