夏も終わりを迎えた9月の涼しさを感じながら私は歩いていた。
向かう先はそう、セントラルだ。
どうだろうかこの一文は。なにか壮大な物語の始まりを感じさせる。さらにはセントラルという単語が登場人物の高尚さを演出している。
セントラルと言うからにはセントラル以外の拠点もあるのだろう。組織の大きさを感じさせる。そんな大きな組織でこの男はセントラルに向かっているのだ。限られた人間しか立ち入れない選ばれし者、この人物が高い次元にいることが伺える。
このセントラルという単語の魔力気づいたのは先週の事だ。子供も寝静まった後に妻に尋ねた。
「明日はどこにいくんだっけ?」
「セントラルだよ」
クソかっこいい、その後に続く妻の言葉が何も入ってこなかった。驚愕の集中力の無さだ。いやむしろセントラルという単語に集中し過ぎだ。
セントラルとはフィットネス施設のことで実際は2歳児以下の幼児たちがプールで遊んだり、水に慣れたりする極めて可愛らしい場所だ。
セントラルには観客席があり息子の活躍を見ることが出来る。お母さんに抱えられた幼児達がインストラクターの「お口チャーーック!」の後に水に付けられる。突如母親に水に沈められた幼児たちの半数以上が、泣きながら水から出てくるトレーニングだ。そろそろお口チャックときくだけで泣き始めるパブロフの犬になりかねない。
私はここ数日この単語のカッコよさに取り憑かれている。この単語が使われるだけで大体がカッコよく、偉大なものに見えるのだ。
株式会社セントラル、エリート企業なのは疑いようもない。検索してみるとパチンコ屋だった。
BLAZBLUEセントラルフィクション。セントラルフィクションが何を意味しているか全く分からないがカッコイイ。パルプ・フィクションのようなかっこよさがある。セントラルがいた場所に他の何かが入ってもかっこよくなるようだ。
セントラル エロ画像で調べるとセントラルフィールドという作品が1番上に引っかかる。内容は分からないが、確実に人に見られるような漢らしい場所で情事が行われることが容易に想像できる。
凄いよセントラル、お前が優勝だよ。
ちなみに6文字の王者はクライテリアだ。我がブログのタイトルにもなっている。
英語で書くとCriteria。さすがのカッコ良さだ。技術書にも頻繁に出てくるクライテリアは口に出すと自分に酔ってしまうかっこよさがある。
当然ご存知だろうがクライテリアがブログ名になったのは、エクステリアへの深いリスペクトがある。とある科学の超電磁砲に出てくる学園都市第6位心理掌握(メンタルアウト)の食蜂操祈が所有する、能力を生み出すDNAコンピュータの名前だ
―――――――外装代脳(エクステリア)
カッコよすぎる。やはりこの作者のセンスには頭が下がる。こういう無機質な科学要素を命名させれば、これほど才能を発揮する人は無い。
こういう厨二病的センスだが、私の考えではこれは一過性の病ではない。これは先天性の病のようなもので加齢と共に表に出してはいけないことを悟り、厨二病を卒業した、という体を為しているだけに過ぎない。実際は個人の深いところで燃え滾っている。
いくつになっても厨二病は治らず、患者の脳内を駆け回り、匿名のネットワークでは平然とグローバルネットワークをかけ巡るのだ。
例えどんなに創造性のない人間でも、万が一自分が何かに名前をつけることに備えて日々カッコイイ単語を探し続けている。
いわば1番カッコイイと思う単語は何か?を聞くことはその人の人生、性格、センスを聞くことに等しい。
飲み会で話題が止まったとき、新入社員が入ってきた時、採用試験の時、一番カッコイイと思う単語は何か?これを聞けば正確なペルソナの読み取りが可能だ。
読者はここで手を止めて、数分間で自身の考える最もかっこいい単語を思い浮かべて欲しい。
解答例を私がいくつか上げてあなたがどのレベルに至っているか診断して見せよう。
準備はいいだろうか?
私の研究ではこの質問に対する回答は6種類に分類される。安易、選民、私滅、借威、空虚そして王道だ。
まずは安易だ。
ディスティニー、スピリットといった直訳した時の運命や魂など単語自体がかっこいいパターンだ。これは人生経験が足りないと言わざるを得ない。英語や新しい単語に触れる機会が増えた13歳頃から精神が成長していない。単語に含まれる奥深いかっこよさが一切ない。要するに浅いのだ。
だが心配しなくていい。たとえあなたが何歳であろうと、精神年齢はビジネス、エンタメ、人間関係に真剣に向き合う事で成長させることができる。このタイプだけが他の5タイプに代わりうる、いわば成長前の段階なのだ。
次に選民だ。
シュヴァイシュ、アティルド、、シックザールなどだ。希少性の高い単語、オシャレな単語を選んでしまったタイプだ。これは英語圏外や世界史などで現れる「自分だけが知っている単語」をあげてしまうタイプだ。選民意識が強いこのタイプは厄介だ。世界には多くの人が知らない真実があると思い込み、それを知らない者は愚かだという考えに至っている。
陰謀論が好きだったり、宗教にハマったりすることになる。残念ながら世界の真実は「努力しなければ結果が出ない」「一人で出来ることは少ない」「学ばない人間は搾取される」といったような、誰もが知っていて、目をそむけたくなる事が、悉く真実なのだ。あなただけが知っている世界の真実など存在しない。
次が私滅だ。
インヘリット、レイテンシー、エンクリプトなど仕事で知りえた単語をあげるタイプだ。これは悲しいと言わざるを得ない。この問いかけの回答は時間をかけずに回答しなければならない性質上、発生する悲劇がある。それがこのタイプの存在だ。質問に答えるために即座に脳内で様々な候補が上がるが、たどり着いた言葉が仕事の単語である。パーソナリティが消えているも同然だ。
日常の楽しみも就職までの人生も消え去り、回答を求める窮地でたどり着いたものが仕事。これを悲しいと言わずなんと表現するのか。仕事が無意識的にあなた個人を表す拠り所になってしまっている。生活を見直し、早急に治療が必要だ。このタイプは身の回りのほとんどの人に、話していてつまらないやつだと思われている。あと多分真性包茎。
4つ目が借威だ。
インセプション、パラダイムなど何かで取り扱われた単語を取り上げるタイプである。このタイプになぜその単語なのかを聞くと、「好きな作品のタイトルがそれだった」とか、「その単語が使われる映画が面白かったから」とか言い出すのだ。
なんと哀れな人間だ。何か力のある存在に頼ることをしなければ自分を表現することもできない。有名な物の名前を使って「○○で使われていた、だから俺のセンスはおかしくない」なんて考えが透けて見えるようだ。人のセンスを借りて自分のセンスは悪くないと主張する姿は、震えて今にも泣きだしそうではないか。このタイプは優しく接してくれる人でなければ、本当に心を開くことは無い。全てを受け入れてくれるようなお母さんのような存在を探して、社会を歩き回る亡者だ。近づかないで欲しい。
5つ目は空虚だ。
具体的な単語は個々には書かないが、例えるならド下ネタの単語であったり、忘れ去られたしょうもないピン芸人の名前をあげたりするタイプだ。このタイプは場の空気を変えようとする。話題を上げた人間の意図を無視して、自分ボケや意外性を話題の中心に持っていこうとする。話題提供者に展開を任せればいいのに「自分のボケで場を盛り上げれる」「相手を楽しませることができる」と考えている。
実に空虚な精神だ。相手に身を任せることができず、自分の本当の考えと向き合う事もできず、その場をごまかす一時的な回答で乗り切ろうとしてしまう。これまでに何が合ったかは知らないが、中身のない空っぽな存在だ。蹴り飛ばすとアルフォンスのような空洞音がするぞ、試してみよう。
最後が王道だ。
セントラル、クライテリアなど頻出する単語であり、その直訳も素直な単語であること。しかしながら言葉に意味の深さを見いだすことができる。他にはスタンダード、コントロールあたりも良いだろう。一周回ってなんて簡単な表現ではない。一周回らなくても最初から王道がもっとも確かで、美しい領域なのだ。たとえどんな変わり種を歩くことになっても人間は最後に王道にたどり着く。
この話題を上げるに当たって、もう1つ最カッコいい単語の候補があった。読者も気づいているだろう。
そう、「レムナント」だ。
諸君がこの単語の意味がすぐにわかるだろうか?「残余、残物、遺物、面影、残滓」だ。
クソカッコいい、具体的に何が残っているかはわからないが元々偉大なものだった雰囲気がある。
残ってしまうということは本来の役割を発揮できなかった、もしくは役割を発揮した後なのに、何かに固執して残っている。そんなストーリーを連想させる。例えば凶悪なテロ事件や災害の爪痕を残した施設、場所をレムナントと呼ぶこともあるだろう。創作物では色々な人に紡がれて最後に残った希望を「レムナント」と呼ぶかもしれない。
実際は、飲食店の食べ残しもレムナントだし、麻雀で持ち点が1000点以下になってリーチをかけれなくなった人もレムナントなのだ。婚活パーティに入り浸って10年経った人もレムナントと呼んで良いだろう。
凄いよレムナント、世の中のほとんどがレムナントだよ。
良い単語に出会えた、私生活で色んなものをレムナント呼ばわりして回ろう。
お前もレムナント呼ばわりしてやろうか。
おまけ:
実は私、大学時代に圧倒的厨二病作品にドハマりしていた。その作品はドイツをベースにしたダークファンタジーで、BLEACHが割と近いイメージだと思ってもらって良い。その作中のヴァルキュリアというキャラと単語の響きが好きすぎて、頭おかしくなっていた時期がある。
そして同時期にガラケーからスマホへの移行があったのでやってしまったのだ。Lineを初めて使うときにLineID登録をするが、そのLineIDにヴァルキュリアって入れちゃったんですよね。アイタタタタタタ。
会社員になってからもLineIDを変更する方法など無く、完全にデジタルタトゥーとなってしまったヴァルキュリア。先輩・後輩とLineを交換する時は絶対にLineIDをつかわない。QRコードで連絡を交換することを徹底している。ヴァルキュリアってドイツ読みなので普通に書くとワルキューレになっちゃうんですよね。自分のことをワルキューレだと思っている一般男性。その業を背負って生きていくことになってしまった。早くLine倒産してくれ、サービス終了してくれ。
アイタタタタタタタタタタタタタタ。
おわり。